主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【諸言】平成23 年9 月に早期発見治療を目的とした包括的褥瘡ケアシステム(システム)を導入し効果を第49 回日本理学療法学術大会で報告した.今回はシステムの経済面への効果を検討する.
【方法】平成23 年9 月から3 年間の入所者759 名(男性244 名女性515 名,年齢83.7 歳,介護度3.1)を対象にシステム導入前1 年間(前1 群),システム導入後1 年(後1 群),システム導入後2 年(後2 群)に3群化し次の項目を調査
した.褥瘡治療状況,褥瘡治療コスト,褥瘡治療人件費,コストと人件費の総額を1 か月に算出し3 群の差を統計ソフトSPSS で解析した.倫理的配慮は施設倫理委員会の承認後,入所者と家族に研究について説明し同意を得た.
【結果】新規発生率は前1 群・後1 群・後2 群の順に10.5%,22.1%,25%,以下同様に治療繰り越し率18.1%11.4%,7.5% であった. コストと人件費総額1 か月,クッション購入費1 か月,委員会人件費は3 群間に差はなかった.治療薬代1 か月は3642 円,6527 円,2543 円で後1 群・後2 群に差がみられた.エアマットリース代1 か月は0 円,4419 円,7082
円で3 群間に差がみられた.治療人件費1 か月は28432 円,38771 円,36204 円で前1 群・後1 群で差がみられた.栄養食品代1 か月は14784 円,8454 円,8192 円,写真代1 か月は0 円,358 円,332 円,カンファ人件費は1 か月0 円,16407 円,17940 円,受診付添人件費は1 か月1887 円,0 円,0 円, 受診代は1 か月4334 円,0 円,0 円で前1 群・後1 群,前1 群・後2 群で差がみられた.
【考察】新規発生率増加,繰り越し率減少はシステム導入で発生報告により早期発見治療が定着したと考えられる.コスト総額に差はなかったが個々を比較すると, 後1 群,後2 群においては前1 群になかったエアマットリース代,写真代,褥瘡カンファ人件費など褥瘡ケアに関する必要経費が含まれておりシステム導入により経済面には好影響であったと考えられる. 課題として,褥瘡発生予防をさらに徹底させることで経済面の低下が望まれる.