主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 129-
<目的>Pushing を認める症例に対する,非麻痺側と麻痺側での移乗介助方向の違いが,介助者の介助負担感と介助量に及ぼす影響について明らかにすること.<方法>当院入院中でPushing がみられ,移乗に介助を要する6 例に対し,プラットホームから車椅子への移乗介助を,非麻痺側と麻痺側方向で各1 回行った.対象者および家族全員に本研究に関する説明を行い,同意を得た。移乗アプローチの順序はランダムに決定した.検者は当院リハ職員9 名で実施し,各症例の移乗介助後に,介助者の介助負担感(Numerical Rating Scale 方式)と介助量(自立・最少介助・中等度介助・最大介助・全介助の5 段階)を評価した.対象のPushing の重症度の評価法としてScale of contraversive pushing (以下SCP)を用い,SCP0~3 までをPushing 軽度群,SCP3.25~6 までをPushing 重度群と
した.統計処理は両群に対して正規性の検定を行い,正規分布している項目には対応のあるt 検定を,正規分布していない項目にはウィルコクソン符号付順位和検定を行った.有意水準はそれぞれ5%とした.<結果>介助負担感では,非麻痺側への移乗時において,SCP 重度群がSCP 軽度群に比べ有意に介助負担感の増加を認めた.また,SCP 重度群の比較において,非麻痺側への移乗が麻痺側への移乗に比べ介助負担感が増加する傾向がみら
れた.介助量では各項目の比較において有意な差は認められなかった.<考察>非麻痺側への移乗においては,SCP 評価項目における座位での修正への抵抗の有無が,介助負担感の増加に影響すると考えられた.SCP 重度群の比較においては,非麻痺側への移乗の際にPushing がみられ,介助負担感の増加に影響すると考えられた.介助量では検者による介助方法の違いから,有意な差が認められなかったと考えられた.