関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
会議情報

口述
O-130 定期的な体力測定は生活上のリハビリ意識を生むのか~有料老人ホーム30 か月間の検証~
小川康弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 130-

詳細
抄録

【はじめに】有料老人ホームは近年増加傾向にあるが,人員上一人ひとりに同じ時間だけ関わる事が困難であり理学療法士の利点である「入居者に関われる時間の確保」が難しく,リハビリ意識をどのように構築するかが課題であると言える。本報告は当ホームにおける体力測定の分析からリハビリ非実施者の生活上のリハビリ意識に体力測定がどのくらい影響があるかを考察することを目的とする。

【対象】当ホーム平均介護度2.48,平均年齢85.78 歳(2016 年4 月現在)。体力測定は月に一度,10m 歩行,握力測定,片脚立位,functional Reach Test,Floor Finger Distance,Time Up and Go test(TUG)を実施した。期間は

2013 年10 月から2016 年3 月まで30 ヶ月間継続し前月の測定数値との比較とこの一か月間の体調変化を問診した。対象は入居時歩行で日常生活自立しておりリハビリ非実施を選定した入居者とした。なお本人もしくは家族に本研究に関する同意を得た。

【検証方法】1)入居から測定が継続できた人数と自主トレ励行者数2)12 か月以上継続した入居者を対象に入居から6 か月間と直近6 か月間のTUG 平均値比較【結果】期間中52 名が対象として実施された。1)継続できた入居者は29 名うち55.2%(16 名)が自主トレ励行者だった。2)対象者は17 名。改善10 名,1 秒未満低下2 名,3 秒未満低下3 名,3 秒以上低下2 名であり,88%が3 秒未満低下に収まった。3 秒未満低下15 名中8 名が自主トレ励行者であった。

【考察】今回の結果から12 ヶ月以上継続している17 名中10 名が改善していることがわかった。当ホームでは積極的にケアスタッフと協同し生活内でのリハビリを支援しており入居者同士自主トレで切磋琢磨する慣習がある。また測定時の問診では前月の数値を意識する発言が多く体力測定が生活に溶け込んでいることがわかった。以上を踏まえ定期的な体力測定は能力に関心を持たせ,改善しようというリハビリ意識に有用であることが示唆された。

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top