関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-151 物忘れ外来での理学療法士の関わりにより認知機能改善を認めたアルツハイマー型認知症の 一例
木本龍多田智田中尚文村上峰子
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p. 151-

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抄録

【はじめに】 当院の物忘れ外来では、認知症や軽度認知障害(以下、MCI)を有する患者の診療に医師や看護師と共に理学療法士(以下、PT)も携わっている。今回、義足作製中に担当PT が認知症を早期に発見し、早期介入によって認知機能の改善を認めた症例を経験したので報告する。

【症例】 68 歳男性。妻との二人暮らし。現病歴:6 年前に糖尿病性壊疽により左下腿切断し、義足装着にてADL は自立していた。3 か月前に義足を新たに作製したが、十分に管理ができず、1 ヶ月で破損させた。担当PT が本人と家族に問診すると、薬の飲み忘れが増えた、易怒性の出現など、認知症が疑われるエピソードが聞かれたため、物忘れ外来受診を勧めた。

【物忘れ外来での診察】 まず、PT が問診および神経心理学的検査を実施した(HDS-R:16 点)。診察の結果、アルツハイマー型認知症と診断された。身体活動量は1000 歩/日、水分摂取量は500ml/日、収縮期血圧は150 台、血糖値は200 台であった。腎機能障害と経済的理由により薬物療法は行わず、非薬物療法として運動療法および家族指導を担当PT が行った。

【理学療法および結果】 家族および介護支援専門員と連携をして活動量の向上、水分摂取量の確保、服薬管理、義足管理の徹底し、デイサービスを週1 日から2 日に増やすように指導した。その結果、2 ヶ月後には身体活動量は

6000 歩/日、水分摂取量は1500ml/日、収縮期血圧は130 台、血糖値は150 台、HDS-R:22 点となり、薬の飲み忘れや易怒性は改善した。

【考察および結論】 本症例で提示したようにPT は認知症症状を早期に発見し、生活指導上のケアや家族指導を実施できる専門職である。認知症やMCI を有する高齢者は急増しているが、今後はPT が物忘れ外来に関わっていくことで、より良い認知症・MCI の治療が可能になると考えられる。

【倫理的配慮および説明と同意】 患者および家族に症例報告について口頭および書面にて十分に説明し、同意を得た。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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