主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】姿勢定位に関わる認知的側面として、主観的視覚垂直(SVV)や主観的身体垂直(SPV)の重要性が論じられている。近年、加齢による矢状面上の主観的垂直認知の変容が報告されているが、前額面における加齢性変化については不明である。本研究の目的は、前額面上における主観的垂直認知の加齢による差異を明らかにすることとした。
【方法】対象は、健常な若年群15 名(平均年齢25.5 歳)と高齢群15 名(67.9 歳)とした。本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施し、対象者には研究の旨を説明し書面にて同意を得た。SVV の測定は、パソコンで測定可能なプログラムを用いた。検者は視覚指標を水平位から右あるいは左回りに5°/秒の速さで回転させ、対象者が垂直に判断した時点と鉛直位からの偏倚量を記録した。SPV の測定は、身体垂直測定機器(VB)を用いた。対象者はVB 上に閉眼(SPV)または開眼(SPV-EO)で座位となった。検者はVB を左右に15°あるいは20°傾けた位置から垂直方向へ1.5°/秒の速さで回転させ、対象者が垂直に判断した時点の座面の傾きを記録した。手順はABBABAAB 法を用いた。角度は鉛直位を0°とし、時計回りを+、反時計回りを-とした。データ処理は、8 回の平均値を傾斜方向性、標準偏差値を動揺性とし、統計解析には対応のないt 検定を用い2 群を比較した。
【結果】若年群と高齢群の傾斜方向性はSVV 0.0°、-0.5°、SPV-EO -0.6°、0.4°、SPV 0.3°、-0.2°であり差はなかった。同順に、動揺性はSVV 0.7、1.3、SPV-EO 1.9、3.0、SPV 2.2、3.2 であり、全てのパラメータにおいて高齢群で有意に高値を示した(P<0.05)。
【考察】高齢群の動揺性は、若年群よりも全てのパラメータで高値を示した。一般に加齢に伴い視覚や前庭、体性感覚機能が退行することが報告されている。本研究から高齢群では視覚や身体の垂直判断が不安定となり、加齢により前額面上の主観的垂直認知が変容することが示唆された。