関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-019 腰部脊柱管狭窄症による歩行速度低下に対して股関節屈曲を補助する簡易バンドが有効であ った一症例
山田壮一郎豊田和典板垣昭宏矢上健二関口成城
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p. 203-

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抄録

【はじめに】 中谷らは脳卒中片麻痺患者に股関節屈曲補助バンドを用いたことで、歩行速度の向上を認めたと報告している。今回、歩行速度が低下した症例に対して股関節屈曲補助バンドを参考に作製した簡易バンドを使用し、歩行能力の向上を認めたため考察を加えて報告する。 【症例紹介】 70 歳代女性。4~5 年前より下垂足を呈し当院にて腰部脊柱管狭窄症と診断され、X 日にL3/4、L4/5 の拡大開窓術を施行した。X+3 日に硬性コルセットと両下肢に短下肢装具を処方され、X+5 日から理学療法を開始した。なお、本症例には発表について説明を行い、同意を得ている。 【理学療法評価】 徒手筋力検査(右/左)は股関節屈曲2/2、膝関節伸展4/3、足関節背屈

1/1、足関節底屈3/4 で関節可動域制限はなかった。歩行は両側下垂足で両手T 字杖を使用していた。 【理学療法および経過】 セラバンドと結束バンドによる簡易バンドを作製し、上前腸骨棘から大腿部遠位2/3 の前面を結ぶように両股関節に装着した。初期(X+20 日)の10m 最速歩行速度(両手T 字杖)は簡易バンド装着時が35.9 m/分、非装着時が33.1m/分であった。終了時(X+128 日)の評価では身体機能に著変はなく、10m 最速歩行速度(片手T 字杖)は46.5m/分となった。 【考察】 Wittington らは遊脚初期の関節パワーのうち約58%は筋の伸長による受動的弾性が担っていると報告している。我々は本症例と同条件で健常成人の両股関節に簡易バンドを装着して、腸腰筋の表面筋電図を測定した。その結果、装着時は非装着時よりも遊脚期の腸腰筋の筋活動が減少していた。本症例も簡易バンドの装着により遊脚期での腸腰筋の受動的弾性を効率的に使用できるようになったと推察する。さらに、この効率的な歩行を反復学習したことで、終了時には簡易バンドを外しても歩行速度が向上し、効率的な歩行となったと考える。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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