関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-022 膝蓋靭帯断裂術後の筋出力低下に対しMirror Therapy が著効した一例
箕輪俊也木村貞治中川昌子
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p. 206-

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抄録

【目的】Mirror Therapy(以下,MT)は,鏡による視覚的運動錯覚を利用した治療法であり,幻肢痛の軽減や脳卒中後の運動機能改善を目的とした介入法として確立されてきた.近年MT の神経筋再教育の効果から整形外科疾患における適応についても報告がなされるようになり,臨床におけるMT の有用性は広がりをみせている.そこで今回,膝蓋靭帯断裂術後に筋出力低下を呈した症例に対しMT を適用したところ,著効が得られた1 例を経験したので報告

する.

【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,患者への説明と同意を得て実施した.

【症例提示】40 歳代,女性.右膝蓋靭帯断裂.受傷後10 日目に靭帯再建術を施行し術後2 日目から理学療法開始,術後54 日目に退院した.初期評価時の右膝関節機能は屈曲可動域40°,伸展筋力はMMT にて1,ExtensionLag(以下,Lag)は40°と著明な機能障害を呈していた. 【経過】術前はギブス固定にて経過.術後より右下肢免荷,膝屈曲90°以下で理学療法を開始,術後8 日には膝装具が処方され制限なく訓練が可能となった.装具処方翌日からフリーハンド歩行練習を開始したが,Lag は60°と増大し,「力の入れ方が分からない」との訴えが聞かれた.そこで従来の理学療法に,座位での左膝関節の自動伸展に右膝関節の自動伸展を同期させるMT を追加したところ,即時にLag は45°に改善し,継続的な介入により退院時には5°までの改善が得られた.

【考察】本症例は外科的な安静度に応じてADL の再獲得は進んだものの,随意的な筋出力機能の特異的な低下を来たした症例であった.関節固定や不動による影響として,中枢性運動指令の減少や運動イメージ想起機能の低下から筋出力低下を来たすことが知られている.このことから,今回,MT の導入によってLag の改善が得られた理由として,MT による運動錯覚の付与が大脳皮質関連領域の賦活化や運動イメージの再構成を経て筋出力機能の改善に至った可能性があるものと考えた.

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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