関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-023 人工股関節全置換術後、重度股関節屈曲制限を呈した症例~寛骨大腿関節の可動域に着眼し た理学療法の経験~
佐藤俊城
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p. 207-

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抄録

【目的】股関節屈曲制限のある変形性股関節症(以下Hip OA)に対し、人工股関節全置換術(以下THA)後も股関節屈曲に著しい関節可動域(以下ROM)制限が残存した症例を経験した。寛骨大腿関節に着眼した理学療法を展開した結果、良好な成績を得たので報告する。

【症例紹介】左Hip OA を有した60 歳代女性、左THA(後側方アプローチ)を実施。半年前右Hip OA に対してTHA を実施。幼少期に臼蓋形成不全と診断後、股関節に痛みが出現し末期Hip OA と診断されTHA を施行するまで10

年間程度経過。

【説明と同意】ご本人へ報告の旨を説明し、同意を得た。

【経過および理学療法】左THA 術前の股関節屈曲角度は自動右30 度、左10°、他動右40 度、左20 度、靴下着脱動作は要介助。術後股関節屈曲角度は左自動10 度、他動20 度。寛骨大腿関節上の運動を意識したROM 練習、大腰筋の筋力強化を実施、術後4 週目の股関節屈曲角度は自動右70 度、左65 度、他動右80 度、左70 度となり、靴下着脱動作を獲得した。

【考察】末期Hip OA と診断後THA を施行するまでに長期間を要したことから、骨盤後傾による股関節屈曲が習慣化しており、術後も股関節屈曲における寛骨大腿関節による屈曲が乏しく著明な股関節屈曲制限が残存したと考えられた。そこで介入当初より寛骨大腿関節上の運動の獲得を目的に、運動軸の再学習を目的としたROM 練習や大腰筋の筋力強化を行ったことで骨盤と大腿骨の選択的な運動を可能とし、股関節屈曲可動域は自動・他動運動ともに拡大、靴下着脱動作を獲得した。

【まとめ】股関節屈曲角度測定方法は骨盤傾斜を考慮しておらず、理学療法介入においても寛骨大腿関節上の運動は見逃されがちではないかと考えられる。THA 患者の股関節屈曲における寛骨大腿関節上の運動は股関節屈曲制限の改善に対して良好な成績が得られたので、今後は理学療法研究として、臨床においての寛骨大腿関節屈曲の明確かつ簡便な測定方法の基礎研究などへと繋げていきたい。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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