主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】胸椎可動性の測定法はX 線やスパイナルマウスなどを用いた報告がある。本研究の目的は、より簡易的な方法による胸椎伸展可動性測定の信頼性を検討することである。
【方法】 対象は、健常成人14 名(男性10 名、女性4 名、平均年齢27.7 歳)とした。測定課題は端坐位での伸展動作、腹臥位での伸展動作とした。測定方法はC7・Th12 棘突起と胸骨上端をマーキングした後、安静座位および腹臥位で脊柱の弯曲に一致させて自在曲線定規をあて、C7-Th12 棘突起間の距離(以下、C7-Th12 距離)を計測した。座位伸展は脊柱を最大伸展させ、腹臥位伸展は両手で支持した状態から臍が離れない範囲で脊柱を最大伸展させ、両課題の安静時と最大伸展時のC7-Th12 距離を自在曲線定規で計測した。座位伸展および腹臥位伸展は、安静時と脊柱伸展時のC7-Th12 距離の差を求めた。加えて腹臥位伸展では最大伸展時の床から胸骨上端の距離をテープメジャーにて計測した。各課題は理学療法士2 名(検者A・B)が行い、測定順は抽選で決定し、互いの測定値を知らせず同一日に実施した。各3 項目において、3 回の測定値の平均値を計測値とした。統計学的処理にはSPSS を用い、日間の検者内の再現性と検者A・B の検者間の再現性を級内相関係数(ICC)で求めた(有意水準
5%)。本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】 検者内信頼性は、級内相関係数(ICC1,2)が座位伸展で0.75(p=0.00)、胸骨-床距離は0.96(p=0.00)であった。検者間信頼性は、級内相関係数(ICC2,1)が座位伸展で0.85(p=0.00)、胸骨-床距離は0.89(p=0.00)であった。腹臥位伸展は検者内信頼性、検者間信頼性ともに有意な相関が得られなかった(p=0.53, 0.41)。
【考察】 3 項目の中で胸骨-床距離測定で最も高い信頼性が得られた。胸骨の触知は比較的容易であるため、再現性が得られ易いと考える。本結果から、簡便な方法で胸椎伸展可動性の評価が行えることが示唆された。