主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】今回、転倒により左大腿骨転子部骨折を呈し、観血的整復固定術を施工した症例を担当した。回復期病院入院から退院までの治療経過を報告する。発表に際し症例にはヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。
【症例紹介】80 代女性、H27 年12 月、自宅内トイレで転倒、急性期病院に搬送。急性期治療を経て28 年1 月当院入院、回復期リハビリテーション開始。既往歴に両変形性足関節症・両変形性膝関節症があり左膝は3 年前に人工膝関節全置換術を施工している。また、両足部は、変形が著名であり、5 年程前より足関節運動を制御、また骨突出部に直接衝撃が加わらないよう免震インソール付の装具を着用していた。移動は、主に自宅内主に車椅子、週2 回の訪問リハビリ時にサークル歩行器で訓練をしていた。入院時、術創部にVAS3 程度の痛みはあったが膝や足部の痛みは無し。手術の影響で、脚長差が5.5cm(右>左)出現し、左中殿筋・小殿筋の筋力低下はMMT2 程度と著名であった。
【経過】入院後まもなく、車椅子でのADLは自立し、自主訓練も開始した。しかし歩行時、脚長差や筋力低下が影響し骨盤の左への動揺が著名で、右遊脚の出現が困難であった。その為、左足部の装具の上から、加工したキャストシューズ(高さ2cm)を着用し、補高を行った。3 か月の訓練の末左股関節外転MMT4 レベルまで改善し、シルバーカーでの歩行が自立した。
【考察】5.5cm の補高を試した際は、静止立位は安定したものの動作戦略が崩れ、歩行は困難であった。その為、様々な長さでの補高を試したが、2cm の補高が適していた。また、フラットなキャストシューズのソール前方に角度をつけることで推進力が得られ歩行動作の獲得につながったと考えられる。