主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】前十字靭帯(ACL) 再建術後のスポーツ復帰では、再受傷の恐怖や膝の痛み、不安定性により同レベルのスポーツ復帰を果たせない例がある。今回、再受傷への恐怖感を失くす為、受傷機転となった動作の確認や患者教育を重点的に行い、同レベルのスポーツ復帰を果たすことができた症例を経験したので報告する。
【症例】18 歳、男性。診断:右ACL 損傷。術式:関節鏡視下ACL 再建術(STG 使用、Single Root 法)。競技:柔道(高校部活レベル)。受傷機転: 技を掛けた時に相手が覆いかぶさるように倒れ受傷。症例報告をする主旨を十分に説明し同意を得た。
【経過】2014 年5 月14 日、受傷。同年7 月30 日手術施行。術後1 日目より、クーリング、Knee Brace 下での筋力強化および右下肢免荷での両松葉杖歩行練習を開始した。術後7 日目に退院となり、術後11 日目から可動域訓練と
1/3 荷重を開始した。術後4 週で全荷重とし、術後2 か月目から自転車を許可した。術後4 か月よりジョギングを開始し、術後8 か月でラン、ジャンプ訓練を開始した。その後、競技中での禁忌動作の指導および反復練習を実施し、術後9 か月で競技復帰した。
【評価】術後11 日:右膝ROM 伸展0°屈曲80°。 術後1 カ月:ハーフスクワット、ランジ動作にて痛みの訴え無し。
Knee in(-)。片脚スクワットでのknee in(+)。術後4 か月:右膝ROM 伸展0°屈曲140°、等速性膝伸展筋力測定
(60°/秒)にてWBI0.64(健側比73%)。術後8 か月:右膝ROM 伸展0°屈曲145°、等速性膝伸展筋力測定(60°/秒)にてWBI 1.30(健側比88%)。片脚スクワットでのknee in(-)。
【考察】本症例は柔道で技を掛けた時に受傷した。 受傷機転である背負い動作をイメージした片脚荷重動作等を重点的に確認し、受傷メカニズムの教育も合わせて行った。それにより、受傷に対する恐怖回避思考や競技に戻れるのかといった不安感を取り除くことができ、同レベルの競技復帰を果たすことが出来た。