関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
会議情報

ポスター
P-051 脳卒中重度片麻痺患者に対する非麻痺側寛骨の可動性が歩行に与える影響-シングルケース スタディによる検討-
青木拓也廣江圭史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 235-

詳細
抄録

【はじめに】 歩行時の寛骨は前傾後傾を繰り返し行っている.脳卒中片麻痺患者では,不動による関節可動域制限が生じ,仙腸関節の可動性低下も認められ,下肢と体幹の協調性が失われる.本研究では,重度片麻痺患者に寛骨の可動性に対するアプローチを行い,歩行速度が改善した一例を報告する.

【方法】 症例は左中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症により右片麻痺を呈した60 代男性とした.理学療法評価はBrunnstrom Recovery Stage が上肢II,手指II,下肢II,感覚は表在深部覚共に中等度鈍麻,高次脳機能障害は重度の運動性失語・観念運動失行・右上下肢失認を呈していた.発症約6.5 ヵ月で歩行は四点杖と金属支柱付き短下肢装具を用いて近位監視レベルであった.方法はシングルケースデザインのAB デザインを用いて,各3 日間介入

した.ベースライン期間(A)は従来の運動療法を施行し,介入期間(B)では従来の運動療法に加えて寛骨の可動性に対するアプローチを行った.評価項目は10m 歩行速度と歩幅とした.なお,対象者へは研究内容について十分な説明を行い,書面にて同意を得た.

【結果】歩行速度がA では8.19 m/min に対して,B では9.35 m/min と増加傾向が見られた.歩幅はA では16.81cm

に対してB では18.52cm と増加傾向が見られた.

【考察】 本研究は非麻痺側寛骨の可動性を拡大させることで,重度片麻痺患者の歩行速度や歩幅が改善された.これは仙腸関節の可動域が改善したことで,非麻痺側立脚期に同側寛骨を後傾で保持出来たからと考えられた.この寛骨の動きによって,非麻痺側Terminal Stance~Pre Swing で 同側股関節伸展と骨盤左回旋が拡大し,歩幅の改善に伴い歩行速度が改善したと考えられた.脳卒中発症6 ヶ月以降での歩行改善の報告は散見されるが,筋力増強等による報告が多い.今回,重度片麻痺患者に対して非麻痺側寛骨の可動性による歩行の改善は有用であると考えられた.

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top