関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-055 廃用症候群を呈した非代償性肝硬変患者の1例
村上希鈴木沙矢香大久保恒希早稲田明生
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p. 239-

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抄録

【はじめに】非代償性肝硬変は、運動により症状悪化に繋がるという報告も多く、安静が推奨されてきた.しかし過度な安静は廃用症候群を引き起こし、生活の質(以下、QOL)の低下に繋がる.今回、非代償性肝硬変に加え大腿骨転子部骨折術後の安静により廃用症候群を呈していた患者を担当したのでここに報告する.

【症例紹介】90 歳女性.診断名:食道静脈瘤破裂 併存疾患:非代償性肝硬変(child puth 分類 C)、左大腿骨転子部骨折(平成28 年3 月ORIF)、肝細胞癌.他院にて左大腿骨転子部骨折術後、食道静脈瘤破裂を併発し加療目的で当院に入院.入院時はFIM29 点でセルフケア・基本動作・認知機能を減点項目とした.尚、発表に際し本人、家族に同意を得た. 【経過】初回評価時JCS l-1、全身倦怠感、胸腹水貯留、酸素1L 投与.運動負荷量の漸増条件は、他覚症状として血清AST、ALT 値200U/L 以下、腹囲と体重の増加がないこと、SpO2 90%以上、運動後呼吸数30 回以下を条件とした. 4 病日目まで腹水貯留と全身疲労感、離床による呼吸数増悪を認めたため端坐位までとした.10 病日目には他覚症状に改善を認め、腹囲-6.5cm となり移乗練習を開始した.この時点で移乗中等度介助であった.その後12 病日目から17 病日目までアルブミン低下、酸素化不良、熱発により起立訓練までとし、20 病日目の症状軽快に伴い移乗練習を再開、21 病日目より平行棒内歩行練習を開始した.25 病日目にはサークル歩行器軽介助となったが、歩行に対し消極的発言が多くなり、患者と相談の上、歩行獲得からポータブルトイレ自立へ目標設定を変更した.37 病日目には下衣更衣動作獲得によりトイレ動作自立となった.転院時FIM は 73 点.

【考察】従来、非代償性肝硬変の患者には安静が推奨されている.今回廃用症候群の改善のため、特に他覚症状に注目して運動負荷を考慮し離床を促したことで、動作耐容能向上やADL 再獲得が可能となり、患者のQOL 向上へ繋がると考えた.

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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