関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-056 患者指導とプログラム選択によりリハビリへの参加を促すことができた一症例
黒川望鈴木沙矢香尾戸一平早稲田明生
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p. 240-

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抄録

【はじめに】 外科的治療において開腹術が選択される場合、呼吸器合併症の予防として呼吸療法を行うことが有効とされている.リハビリテーション(以下リハビリ)効果を高めるために、術前術後の患者教育が必要である.今回リハビリに消極的な患者を担当したので報告する. 【症例紹介】S 上結腸癌と診断後、転移性肝腫瘍に対し外科的治療が必要となった70 代男性.入院前FIM126 点.以前S 上結腸癌術後にリハビリを実施したが、リハビリへの参加が得られなかった.尚、発表に際し本人に同意を得た.

【経過】外来から介入を開始し、術前術後リハビリを実施した.外来リハビリでは、視覚的に効果が確認できるよう最大吸気持続法(トライボール使用)を用いた.練習方法を記載した書面を渡し自主練習を指導したが、術前リハビリでは患者がトライボールを持参せず再指導は行えなかった.術後は自主練習のチェックリストを作成し、リハビリ介入中に実施内容と回数を確認したことで、術後はトライボール5 回を1 日2 セット、歩行練習160m、座位での筋力強化練習が行えた.呼吸機能評価を比較すると最大吸気持続時間は術前1.44 秒、退院時0.92 秒であった.身体機能評価を比較すると6 分間歩行試験において、歩行距離は術前420m、退院時350m であった.呼吸機能、身体機能共に低下が認められたが、FIM126 点で自宅退院が可能となった.

【考察】外来より呼吸指導、運動指導を行うことで合併症を起こすことなく自宅退院へ繋がった.リハビリ意欲が低下している患者に対してトライボールによる視覚的な呼吸リハビリは、患者が効果を確認できることで意欲を引き出すことができ、リハビリへの参加を促すことができた.しかし退院時の呼吸機能、身体機能に低下が認められたことから、今後はチェックリストの作成を含め、患者の協力を促せるようなプログラム立案、運動指導を早期から開始する必要があると考えた.

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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