関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
会議情報

ポスター
P-058 多発骨転移を有する肺がん症例に対する理学療法の経験-早期自宅退院に向けた介入-
新井健介宮村大治郎門手和義姫島美幸坂英里子安部諒谷直樹舘野純子赤池幸恵岩井悠希永井勝信
著者情報
キーワード: 肺がん, 骨転移, 環境調整
会議録・要旨集 フリー

p. 242-

詳細
抄録

【はじめに】骨転移を有する肺がん症例に対して病的骨折のリスクを評価し,環境調整を含めた理学療法(以下,PT)介入を行い自宅退院することができた症例を経験したため報告する.

【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言および当院の臨床研究に関する倫理指針に従って実施した.データは個人情報保護に十分に注意して調査した.

【症例紹介】診断名:右上葉肺腺癌(cT4N3M1b)/多発骨転移(胸骨,Th7/8,S1)キーパーソン:夫自宅環境:一軒家.寝具は普通ベッドを使用.自宅内は手すりなし.2013 年5 月にCT にて肺腫瘍を指摘された70 代女性.肝転移や多発肺転移を認め,当院呼吸器内科受診.検査の結果,右上葉腫瘤影,多発脊椎転移,多発骨盤転移,胸骨転移,右肋骨転移,多発脳転移あり.同月より化学療法開始.2014 年12 月,疼痛の増強あり,多発脊椎転移(Th7/8,S1)に対して放射線治療(20Gy/5Fr)施行.12 月25 日,定期外来時全身状態不良のため入院.2015 年1 月5 日,PT 開始.

【経過】入院11日目よりPT開始.意識清明.鎮痛薬の使用なし.下肢筋力はMMT4.運動麻痺はなかった.Performance Status(PS)は3 点.PT 開始時のThe Spine Instability Neoplastic Score(SINS)は5 点で安定性あり.本人の希望は家の中での生活ができるようになることであったが,起き上がりが困難であり,さらに歩行時に動揺がみられ転倒リスクが高い状態であった.したがって,骨病変部への捻れや圧迫による病的骨折のリスクを最小限にする動作の指導を行い,起き上がりの獲得のために電動ベッドを導入,歩行安定のために固定型歩行器の使用を開始し,入院20 日目に自宅退院となった.

【考察】本症例は,介入開始時からADL 低下がみられていたが,在宅で過ごす時間ができる限り長期間となるように,早期退院に向けて介入を行った.全身状態不良であり,短い期間での介入であったため身体機能の改善は困難であったが,動作指導,環境調整により自宅退院が可能となったと考える.

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top