関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
会議情報

ポスター
P-116 脳梗塞により左半側空間無視を呈し、ADL の介助量軽減を目指した一症例-トップダウンアプロ ーチを中心に-
鈴木公二井田真人富田博之市川久恵
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 300-

詳細
抄録

【はじめに】今回右中大脳動脈・右後大脳動脈の広範囲な梗塞により、左半側空間無視(以下、USN)を呈す症例を経験した。トップダウンアプローチを行い、日常生活活動(以下、ADL)の介助量軽減が図れたため報告する。

【症例】年齢:80 歳代 性別:女性 利き手:右利き【診断名】右脳梗塞【障害名】左半身麻痺、左同名半盲【初期評価】入院当初は、基本動作時から左側への関心が乏しい状態であり右側を向いている事が多かった。特に歩行時は左側への注意が向きにくかった。感覚検査:表在・深部感覚 感覚鈍麻あり。Barthel Index(以下、B.I):25/100 点、Functional Independence Measure(以下、FIM):66/126 点、Behavioural Inattention Test(以下、BIT)通常88/146

点 行動29/81 点、Catherine Bergego Scale(以下、CBS)観察評価:合計11 点 自己評価:合計5 点。

【説明と同意】発表にあたりヘルシンキ宣言に則り、紙面上・口頭にてご本人に同意を得た。

【治療内容】右側から左側への体幹回旋と視覚走査を取り入れた運動を行い、本人の自発的な運動から左側への注意を促した。ADL への汎化を狙い自宅内を想定した基本動作練習を実施した。

【最終評価】退院時には起居・移乗動作は支持物を使用し自立となり、見守りでの伝い歩きや手引き歩行も可能となった。B.I:55/100 点、FIM:80/126 点、BIT:通常134/146 点 行動74/81 点、CBS 観察評価:合計8 点 自己評価:合計8 点。

【考察】本症例のUSN は、感覚性・方向性注意障害説や方向性注意のネットワーク障害が当てはまると思われた。今回、体幹回旋運動などのトップダウンアプローチを行った事で体幹筋の促通による腹内側系の賦活、半球間抑制による損傷側の脳の機能低下を防いだ事がUSN の改善やADL の介助量軽減につながったと考える。

【まとめ】今回の症例を担当し、USN がどの動作遂行の過程で著明となり問題になるのかを把握する事の重要性を学ばせて頂いた。

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top