主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】生活期において,金属支柱付短下肢装具(以下SLB)使用により疼痛が出現し歩行耐久性が低下した脳卒中片麻痺患者に対し外来リハビリを実施した.装具の再検討を行いRemodeled Adjustable Posterior Strut AFO(以下RAPS)を用い歩行訓練を中心に実施した.屋外歩行自立に至った.なお,本人に十分な説明を行い発表の同意を得た.
【症例紹介】60 歳代女性.診断名:右視床出血.現病歴:平成25 年X 月発症.第28 病日当院へ転院.第205 病日自宅退院.外来リハビリを開始.既往歴:高血圧症,分娩性麻痺(左上肢単麻痺).HOPE:歩行自立,通院自立.
【初期評価】Br‐stage:左3‐3‐3.感覚検査(左上下肢):中等度鈍麻.ROM-T(右/左):股関節伸展10°/0°,足関節背屈10°/0°.MMT:右上下肢5・体幹3 レベル.歩行速度:SLB 装着時5.1m/分.基本動作:自立.日常生活動作:FIM;111/126 点.歩行:SLB 装着しT 字杖で右腋窩軽介助,約10m 可能.左Mst~Tst に左下腿とカフの接触面に疼痛が出現.
【問題点と介入】SLB は前後への剛性が高く,左Mst~Tst に左股関節の伸展が難しいため,下腿のカフに寄りかかり左片脚支持期の安定性を得ていた.しかし,左下腿とカフの接触面に疼痛が生じ,歩行機会が増えず耐久性の向上が得られなかった.そこで,歩行機会を増やすために環境調整と可撓性を有するRAPS への装具の変更を行い,屋内・通院が自立となった.
【考察】RAPS は軽量で,支柱の撓みによる下腿の前傾の誘導が可能である.RAPS に変更したことにより左Tst で左股関節の伸展が誘導され前方への推進力を得られ,左立脚期の疼痛が消失したと考える.結果,左下肢への荷重量が増加し,体幹筋・腸腰筋が促通され,左振り出しが容易になり,左鼡径部の疼痛が消失したと考える.自宅環境も変更し、外来リハビリ以外に歩行頻度が増え,左下肢への荷重量が増し,耐久性が向上したと考える.結果,屋内歩行・通院が自立に至ったと考える.