主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】上腕骨外側上顆炎は短橈側手根伸筋(以下ECRB)腱の微小断裂で生じる付着部症である。今回前腕のストレッチを行ったが疼痛が残存し超音波診断装置(以下超音波)を用いて再評価を行い橈骨頭へアプローチを行ったところ症状が改善した患者を経験したのでここに報告する。尚、症例発表には発表の主旨を説明し承諾を得ている。
【方法】1.症例紹介50 代女性。2015 年4 月から原因なく疼痛が出現。8 月に当院受診し右上腕骨外側上顆炎と診断された。理学療法は前腕のストレッチを中心に行ったが疼痛消失には至らなかった。日常生活では主婦業と英会話教室の講師で、手作業が多い環境である。主訴は手を使えば痛い。既往歴は右肩関節周囲炎がある。2.理学療法評価関節可動域(右/左)は肘関節屈曲145/140、回内90/100、回外90/100 だった。整形外科テストはChair test、Thomsen test、示指伸展テストが陽性、圧痛は腕橈関節、橈骨頭、上腕骨外側上顆に認めた。再評価として超音波で橈骨頭の動態評価を行い前腕回内時に健側に比べて橈骨頭の腹側への移動量が少なかった。3.PT のアプローチ第一選択としてECRB 等の伸筋群のストレッチを行い即時的な効果はあったが所見に著変なし。再評価し橈骨頭へのアプローチとして回外筋、上腕二頭筋、橈骨頭に対しモビライゼーションを行ったところ症状は改善した。
【結果】超音波の動態評価は橈骨頭が腹側へ2.5mm から5.0mm と移動量の改善を示した。外側上顆と橈骨頭、腕橈関節の圧痛は消失しThomsen test、示指伸展テストは陰性になり、chair test は疼痛が減弱した。
【結論】第一選択の治療として前腕のストレッチを行ったものの症状は改善しなかった。再評価として超音波で橈骨頭の動態評価を行い橈骨頭への理学療法を行った結果、移動量と症状の改善を認めた。橈骨頭の可動性低下に回外筋や上腕二頭筋の拘縮が関与していた可能性がありその評価に超音波が有用だったと考える。