関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: S-016
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シンポジウム2 学校教育現場に求められる小児の理学療法士の役割を考える
教育現場への外部専門家派遣事業における群馬県理学療法士協会の取り組みと課題
小川 克行
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抄録

 群馬県理学療法士協会(以下県士会)では平成25年度より県教育委員会から「特別支援学校機能強化モデル事業」への参加を県作業療法士会および言語聴覚療法士会とともに委託されて協力を開始し、現在も参加している。県士会地域局小児リハビリ部(以下小児リハ部)は県教育委員会との準備・調整、県士会員との調整役を担っている。

 派遣にあたってはPTの責任者を県内4エリアにそれぞれ配置し、各エリアの教育現場からの依頼を受けている。派遣時の流れは、まず各特別支援学校の専門アドバイザーが教育現場からの相談を受け、県教育委員会を通じてPT責任者が依頼を受けている。依頼を受けたPT責任者が派遣するPTの調整・決定をし、派遣している。派遣されたPTは訪問後に報告書を提出して各エリア責任者と小児リハ部長とで内容を共有している。

 現在、事業に登録しているPTは75名おり、所属施設、対応可能な分野も多岐に渡っている。平成25 年度~30年度の6年間で派遣は特別支援学校、小学校、中学校、高校、幼稚園・保育園に延べ119件実施した。相談内容は学習時の姿勢、机・椅子の適合、運動の指導方法、歩行介助、ストレッチの方法、運動負荷の程度、学校の環境設定、体育・行事の参加方法など多岐に渡っている。参加したPTからは「学校教育現場での工夫を知ることができた」、「担当児の学校での様子を確認できたことで、実施している理学療法を見直す良い機会となった」など参加が有意義であった意見が多くあった。学校からの相談内容は事業を継続する中で変化がみられている。開始当初は「何か必要なことがあるか見てほしい」といった抽象的な内容が多かったが、現在ではより具体的な相談内容となっており、1人の児に対してOT・STと相談内容を区別をした相談が挙がるなどPTの専門性についての理解も進んでいるように感じている。

 今後の課題として派遣参加者数を増やすことと訪問後の対応がある。現状では事業への参加経験があるPTは登録者のうち半数未満であり、今後多くの登録者が参加できる形をつくることで多様なニーズに対応しやすくなる。また、登録者から普段小児理学療法に関わっていない、経験が浅いなどで参加への不安を感じる声もあり、昨年度より派遣時に経験者に同行する形で見学者の受け入れを開始した。今後工夫を重ねて多くのPTが参加できる体制を作っていきたい。訪問後の対応においては、訪問後の経過やアドバイスがどのように活かされているかをPT側が把握しきれていないなど課題も多くあり、今後県教育委員会と情報共有、連携していける体制づくりも必要であると考えている。

 本シンポジウムでは、本県における事業開始までの準備とその後の経過、現在抱えている課題について報告する。各地域でそれぞれ取り組み方が異なると思われるので、情報交換を通じて学校生活の支援について考える機会となることを期待している。

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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