関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-036
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フレッシュマン
倒立振り子モデルから逸脱した歩容に対し介入を行った神経サルコイドーシス疑いの症例
大金 亜佑美来住野 健二中山 恭秀
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抄録

【はじめに】神経サルコイドーシスは対処療法により症状が緩和し,発症前ADLに回復する例が多いが,本症例は回復に難渋した.症状の一つであった倒立振り子モデル(以下IP)から逸脱した歩容に対しバランス練習を行い改善した為,ここに報告する.

【症例】40代女性,職業は美容系.X日に右上肢の痺れより発症した.筋力低下が続発し,共に全身に拡大しX +60日に体動困難となり,精査・治療目的に当院に入院した.MRIではC2−C7レベルに高信号域が点在していた.X+68日のPT開始時は両上肢・足趾の痺れ,C4以下の触覚鈍麻,四肢の深部感覚鈍麻・筋力低下がみられ,ADLは全介助レベルであった.

【経過】X+65日より治療を行い,約2週間後にはキャスター付き歩行器歩行が可能になった.症状は徐々に改善し,院内ADLが自立した為試験外泊を行うも家事動作が困難であったことを契機に鬱症状を呈した.その後鬱症状は改善したが,上肢の痺れが再燃し疼痛へ変化した.歩行は床面では問題なく可能であるように観察できたが,トレッドミル上では,正常歩行に反しステッピング反応様であり,IPから逸脱した歩容であった.改善する為には,支持基底面(以下BOS)に対する足圧中心(以下COP)の運動操作能力を向上させる必要があると考えた.バランス練習を中心に介入を継続した結果,X+97日時点では片脚立位保持中のCOP移動距離の矩形面積が左右平均297.2mm2,歩行時の各立脚期でのCOP移動距離の標準偏差(以下SD)が左右平均27.0mmであったが,X+133日では片脚立位保持中のCOP移動矩形面積が左右平均192.0mm2,歩行時の各立脚期でのCOP移動距離のSDは左右平均18.0mmとなった.

【考察】トレッドミル歩行の特性として、後方へ移動していくBOSに対して,COPを相対的に前方へ移動させる必要があることが挙げられる.本症例は深部感覚鈍麻がみられていたが,バランス練習を行うことで,この特性に転移できるCOP操作能力を学習できたといえる.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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