主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2019/10/26 - 2019/10/27
【目的】本研究では呼吸条件の違いが重心動揺に与える影響について比較,検討した.臨床場面においてドローイン練習の際,腹式呼吸を用いて動作の安定性,アライメント修正などにアプローチする理学療法はよく行われている.先行研究において体幹筋と重心動揺,体幹筋と呼吸の関係性を示した報告はいくつか散見される.しかし呼吸と重心動揺についての報告を見つけることは出来なかった.そこで本研究では腹式呼吸を行うことが重心動揺にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした.
【方法】実験参加者はヘルシンキ宣言に基づき研究の主旨を十分に説明した健常成人26名(男性13名,女性13名,21.3±3.1歳)とした.参加者はベッド上背臥位にて各呼吸条件(腹式呼吸,胸式呼吸)で5分間の呼吸を行った.呼吸の前後に重心動揺計で右片脚立位にて重心動揺(総軌跡長,単位軌跡長,外周面積,矩形面積,単位面積軌跡長,実効値面積)を測定した.参加者は呼吸練習を行い,体幹3か所(内腹斜筋,外腹斜筋,複合部)に貼られた表面筋電図にて筋活動を測定した.腹式呼吸条件は筋電図にて筋活動が認められ,積分値にて胸式呼吸条件と比較して有意に筋活動が高かったもので吸気4秒,呼気8秒で行った.胸式呼吸条件は腹式呼吸条件と比較して有意に筋活動の低かったもので吸気1秒,呼気2秒とした.参加者は両条件をランダムに1週間以上の期間を空けて実施した.統計解析は重心動揺値6項目について,測定タイミングと呼吸条件の2元配置分散分析の後,多重比較を行った.
【結果】総軌跡長,単位軌跡長において腹式呼吸条件前と腹式呼吸条件後に有意差が認められた.その他の値に有意差は認められなかった.
【考察】外周面積などに有意差はなかったことから,一定の面積内での姿勢制御を行ったと考えられる.一方,総軌跡長は小さくなった.このことからゆっくりとした姿勢制御をできるようになったと考える.