関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-062
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フレッシュマン
下肢人工関節置換術後のSpO2の推移の報告
山本 悠太小川 英臣岡安 健酒井 朋子星野 ちさと
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抄録

【目的】我々は下肢人工関節術後において深部静脈血栓症(以下DVT)や肺血栓塞栓症(以下PTE)の早期発見のため,経皮的動脈血酸素飽和度(以下SpO2)を術前後に測定した.うち,SpO2低下例が複数存在したため,低下例の背景や推移を調査し,若干の知見を得たので報告する.

【対象と方法】対象は当院で人工股関節全置換術または,人工膝関節全置換術を施行した計57例(2017年6月〜12 月,男性5例,女性52例,平均年齢70.2歳(47 〜89歳),平均BMI24.43 kg/m2(16.53 〜37.64kg/m2))とした.方法は術前日および術後介入初日〜5日目の介入開始時,安静座位にてパルスオキシメーターでSpO2を記録した.その値が95%以下,かつ術前日よりも3%以上の低下を有意低下例とした.全対象で術後初回介入時,下肢静脈エコーで近位型DVTの有無を確認した.有意低下例に対し,低下の原因を後方視的に検討した.

【倫理的配慮】当研究は院内倫理委員会に承認され,患者データの収集は,ヘルシンキ宣言に基づき行われた.

【結果】有意低下は5例(約10%)で認め,その全例とも術後初日が最低値であり,2日目以降回復傾向を示した.有意低下例を含め当該期間内では近位型DVTは検出されなかった.有意低下1例に対し造影CTも施行されたが,PTEは認めなかった.血液検査などのカルテ情報からもSpO2低下に直接影響しうる所見は見つからなかった.

【考察】有意低下5例に関し,今回はPTE,DVTを認めなかった.術後SpO2低下には,術侵襲での血管透過性亢進による一時的な胸水貯留,画像上検出し得ない微小肺塞栓,低換気など多因子が影響した可能性がある.しかし,致死的PTEは最も避けるべき術後合併症のため,SpO2低下時は適切なタイミングで精査の要否や負荷量等を,患者ごとに医師と連携し検討していくことが重要だと考える.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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