関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O-023
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口述
移乗動作自立へ向けて病棟との適切な情報の共有が有効だった脳梗塞の一例
原田 涼平富田 英正副島 美和子村山 浩一
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抄録

【はじめに】理学療法(以下PT)室と病棟との移乗動作の自立度に相違が生じていた症例を経験した.病棟での移乗動作の問題点が改善するために,症例及び看護師への動作方法の伝え方を工夫したことで,病棟での自立度が向上したので以下に報告する.

【症例紹介】症例は左脳幹・左小脳梗塞を発症した40歳代男性である.右片麻痺,左上下肢及び体幹に失調症状,構音障害,嚥下障害を呈していた.既往歴に14歳時に脳挫傷(前頭葉)があった.発表に関して,本人に書面にて説明し,同意を得た.

【経過】発症から43病日に当院へ転院し,覚醒及び耐久性の低下を認めた.FIM運動項目得点(以下FIM運動),FIM認知項目得点(以下FIM認知)はともに25点,FIM 移乗(椅子・ベッド・車いす)項目得点(以下FIM移乗)は2点だった.182病日には覚醒及び耐久性が改善し,FIM運動は46点,FIM認知は30点,FIM移乗は4点となった.しかし,PT室での移乗動作は介助を要さず監視で実施可能であり,病棟での能力との間に相違がみられた.病棟での移乗動作を評価したところ,方向転換時にふらつきがみられ,その場面で転倒リスクを認め介助を要していた.PT評価より,ふらつきが生じる問題点は,右下肢支持性低下と体幹不安定性と考えた.そこで症例及び看護師に対し,問題点を改善するための動作方法を,運動学的な用語を極力使用せず平易な言葉で伝えた.その後,病棟にて適切な方法で移乗動作を繰り返すことができ,その結果,移乗動作は改善し,207病日のFIM運動は65点,FIM認知は32点,FIM移乗は6点(修正自立,手すり使用)となった.

【考察】他職種と情報を共有する際には,分かりやすい言葉を使うなどの工夫が必要であるとの報告がある.今回,問題点を改善するための動作方法を,平易な言葉で症例及び看護師へ伝えたことで,病棟でも適切な動作を反復することができ,移乗動作の自立度の改善につながったと考えられる.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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