公共政策研究
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特集 21世紀における公共政策の課題と構想
政治改革再考:21世紀の課題
加茂 利男
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2001 年 1 巻 p. 39-53

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抄録

1990年代の政治改革が功を奏さず,政治が経済・財政危機に対する有効な対応をなしえずに漂流を統けているなかで,21世紀の開幕とともに再び政治改革が日本の課題としてクローズアップされている。とくに今日の政治改革論議では,政党政治の機能不全に対する不信を背景に人民投票的な制度への志向が高まり,議院内閣制という憲法的な統治原理の変更さえ議論されはじめていることが注目される。

21世紀の政治改革を拷えるばあい,まず90年代改革の「失敗」をふまえた政治改革理論の再検討が必要であろう。政治改革の先行諸理論を改めて検討してみると,制度の機能に関する考察と政治社会の歴史的条件についての考察が慎重に組み合わされていたことが再発見できる。こうした「政治改革論の方法」に立って21世紀の政治改革を考えてみたとき,日本の政治改革では政治社会の分析や改革が軽視され,制度の改革に過大な期待をかける傾向が強く,先進国中最大規模の制度改革が行われているにもかかわらずその改革が空転している点に特徴があるように思われる。

「首相公選制」をはじめとする21世紀の政治改革論にもこうした傾向がみられるが,このような改革が成功するかどうかは疑問である。政治社会レベルからの「ボトムアップ」型改革がより重視されてよい。

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© 2001 日本公共政策学会
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