2001 年 1 巻 p. 24-38
バブル崩壊後,10年以上の歳月が経過しているが,日本経済は未だに停滞を抜け出せていない。しかも財政赤字は膨張し,不良債権問題は巨額の損失処理の実行にもかかわらず依然として拡大している。
日本経済長期低迷の原因は,政策当局が典型的な「ストップ・アンド・ゴー」政策を繰り返してきたことにある。92年,94年,95年,98年にとられた大型の景気支援の経済政策は,いずれも株価の急反発と景気の明瞭な改善の効果を発揮している。日本経済の改善が続かず,株価急落と景気再悪化を生じさせてきた理由は,政策当局が時機尚早に景気抑圧型の財政政策,あるいは金融政策を発動してきたためである。
94年は時機尚早の金融引締めへの動きが事態悪化の契機になった。96年は大型増税の決定で,景気拡大軌道が崩壊した。2000年は森政権のもとで,財政・金融政策が足並みを揃えて緊縮政策を採用し,株価下落と景気悪化を招来した。
日本経済を再浮上させるためには,この「ストップ・アンド・ゴー」の政策を是正することが必要である。ところが,一般世論は景気支援型の政策発動そのものが,日本経済長期低迷の原因だと論じている。経済学界を含めた言論空間が未成熟であり,正当な論議が十分に提示されず,またメディアも現実を批判的に分析する正当な批評家精神を失っている。日本再浮上のためには,日本の言論空間の質を高めることが必要である。