公共政策研究
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論文
重要伝統的建造物群保存地区制度の効果と空き家問題―自治体アンケート調査を踏まえて―
呂 茜
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2015 年 15 巻 p. 78-89

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抄録

歴史的な建造物や景観・町並みを保存・保全することを目的に,市町村によって最も活用されてきたのが重伝建地区制度と言える。本稿は,全国の重伝建地区を抱える自治体へのアンケート調査を通して,文化財保護法で謳われている伝統的な建造物や景観・町並みの保存・保全という同制度の目的と,並行して文化庁が唱えている地域の自立や持続のための同制度の地域振興・観光振興への活用がどう認識されているか,重伝建地区の存続に向けてどのような問題・課題があるか,という実態把握をまず行う。その上で,伝統的建造物の修理・修景への財政補助がどの程度の効果をもってきたか,そして近年の懸案事項である空き家問題の実態とその対策の効果に関する検証を行う。

アンケート結果の検証・検討の結果,重伝建地区への選定と財政補助が,伝統的な建造物および町並みの保存・保全に一定の効果をもたらしてきたことは認められる一方で,財政補助によって地区全体の伝統的建造物の修理を終えるには50年もの長期間がかかることが分かった。現在の対策では,人口減少や後継者不足の方が先に進み,財政補助金の減少傾向や空き家増加を鑑みると,地域の衰退に歯止めがかからないことが危惧される。重伝建地区でも空き家問題は深刻化しており,その対策として活用されている行政による買取り・活用や空き家バンクによる斡旋も,抜本的対策にはほど遠い。制度創設から40年を経た重伝建地区制度も,地域の持続性を考えると根本から制度再構築を図らなければならない時期に来ていると言えよう。

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© 2015 日本公共政策学会
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