公共政策研究
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特集 政策評価のフロンティア
行政評価の本質と「科学革命」:わが国自治体の行政評価を手掛かりに
上山 信一
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2002 年 2 巻 p. 70-81

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抄録

行政評価は,古色蒼然とした公共経営の分野に「科学革命」をもたらす画期的なイノベーションである。それは,政府の経営を19世紀以来の管理統制型から人間中心主義の自由閥逹な営みへと変えていく。なぜなら,行政評価は行政の活動と成果を客観数値化し,さらに経営管理名と現場部門の間に契約関係を確立する。さらにそれを拠り所に,現場部門に意思決定の権限委譲と自律的な業務運営を委ねる。その結果,現場部門は不断の切磋琢陪を促され,イノベーションを産み出す。さらに現場部門からの業績情報のフィードバックは,経営管坪者が戦略的な資源配分を行う材料となる。行政評価はこれらのメカニズムをフル回転させ,行政経営の生庁性と透明性を飛躍的に高めるのである。

ところがわが国の自治体の多くは,このような行政評価の本質を洞察していない。特に,組織内への契約原理の導入や現場への権限委譲の重要性を見落としている。その結果,単に従来利の予算査定や総合計画のプロセスを計量化するだけに留まっている。しかも,多くの場合,行政評価は管理部門による現場統制の強化の手段として使われる。その場合,PDS(プラン—ドゥ—シー)のサイクルを目指すという宜言は精神訓示でしかない。

行政評価の本質は,19世紀型の宜僚統制型組織を前提としては理解できない。研究者も実務家も21世紀のオープンネットワーク型組織を見据え,れ政評価の前向きな意義を再詔識すべきである。

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© 2002 日本公共政策学会
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