公共政策研究
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社会の長期的利益実現に資する多元的政策分析の試み―再エネ特措法と自立分散型エネルギーシステムを例に―
小松騎 俊作
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2022 年 22 巻 p. 127-140

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抄録

サステイナビリテイ・トランジションにおいては,社会の長期的利益を実現する政策形成が不可欠だが,民主主義の近視眼的な性質がしばしば障害となっている。そこで本稿では,長期的サステイナビリティの観点で先駆例から本質的知見を抽出し,さらにそれを実装する政治過程の設計を支援する知識を獲得するための多元的政策分析を提案する。日本における自立分散型エネルギ一事業と,その拡大を促した再ヱネ特措法を対象として,社会全体レベルでの政治過程分析,コンテクストレベルでの事例分析(宮城県東松島市,群馬県中之条町,神奈川県小田原市),2つのレベルの分析に基づく統合的検討からなる多元的政策分析を試行した。コンテクストレベルの分析を通して,ビジネスとしての自律性を高めるステークホルダーの互恵関係と,事業目標に対する持続的コミットメントを実現する方策といった,長期的観点で事業のサステイナビリティに資する要素が概念化された。社会全体レベルの分析と統合して検討すると,再エネの量的拡大を優先目標とした制度設計のために,事業のサステイナビリティを実現する方策に制約が生じた可能性が示唆された。多元的政策分析から得られる知見は,政策・制度化アイディアを提示するだけでなく,それを実現する政治的方策を検討する基盤的知識となりうる。

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© 2022 日本公共政策学会
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