公共政策研究
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個人情報の連携は支持されるか―ヴィネット実験による検証―
砂原 庸介
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2022 年 22 巻 p. 59-71

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抄録

近年,社会保障の給付と税の負担を一体のものとして考え,税の軽減や還付によって再分配を行おうとする議論が注目されている。その際に重要なのは,人々の個人情報を利用して適切な給付のターゲットを絞ることである。2013年に導入されたマイナンバー制度は,情報連携のためのインフラストラクチャーになると期待されているが,現在までのところ,所得や税に関する個人情報を他の個人情報と連結させることが進んでいない。地方自治体における所得や税についての情報の守秘義務は厳格であり,地方自治体はそれぞれに独自の規律によって所得や税の情報を保護しているからである。

本論文では,給付と負担をリンクさせた新たな政策を構想するに当たって,税務情報を含めた個人情報を利用する情報連携が人々から支持を受けているかどうかを,オンラインでのサーベイ実験で検証した。その結果,人々が税務情報を利用したものであっても,情報連携について肯定的に考えている傾向があることが示された。情報収集の方法を,郵送から情報連携に変えていくことは,給付の対象を限定するかどうかの議論と同程度に,その支持に対してインパクトをもたらす可能性がある。さらに,情報感度の度合いによって3つのグループ分けして分析を行い,情報の利用に寛容なグループにとっては給付を実施することが,中間的なグループにとっては情報連携を強調することが,支持を高めることが示された。

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© 2022 日本公共政策学会
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