2003 年 3 巻 p. 130-136
本研究では,景気浮揚のための代表的な政策である公共事業と高齢化社会において拡大が不可避である社会福祉支出の生産波及効果を拡大レオンチェフ乗数(通常のレオンチェフ乗数,すなわち中間投入を通じた生産波及効果,と消費活動を通じた生斥波及効果の2つの効果の結合効果)を推計することによって比較分析した。この推計に当たり,取り上げる消費の範囲に関しては,2つの考え方がある。すなわち,消費の範囲を広くとる総最終消費支出ベースによる推計と消費の範囲を狭くとる家計現実消費ベースによる推計である。本研究では,両方の推計を行った。いずれの推計でも,社会福祉と公共事業の牛産波及効果の差は1%以内におさまっており,社会福祉と公共事業の生産波及効果はほとんど同程度とみなせる。この結果は,短期的な景気浮揚のための公共支出の配分において,公共事業だけでなく,社会福祉も選択肢の1つになりうることを示唆している。