2005 年 5 巻 p. 108-118
本稿の目的はH本の安全保障政策研究にジェンダーの視点を取り入れることてある。対外政策,とくに安全保障政策に関して,政治家たちは,利益団体あるいは選挙区における有権者の息向を気にすることなく慈思決定がてきる(と少なくとも考えている)。その結果として,安全保筒政策は政策決定者の経験・教育・社会化にもとづく主観,柑界観なとの価値観が色濃く現れる領域てあるといえよう。日本のみならす各国において安全保障政染決定の場が長らく男性によって独占されてきたことにより,そこに反映されているのは主に男性の経験,主観,価値観などであると考えられる。男性の経験,主観あるいは価値観か「男であること」,「男らしいこと」の意味,すなわちジェンダーと切り離して名えられないことから,本稿ではまず日本社会における「男らしさ」のあり方に注目する。そして,戦後日本において出現した二つの「男らしさ」――「マイホーム・パパ」と「企業戦士」――において「企業戦士」が現在にいたるまで優位を誇ってきたことを踏まえ,このことと1990年代以降日本政府が自衛隊の役割拡大という形で日米同盟強化をすすめてきたこととの関連を考察する。