2021 年 43 巻 6 号 p. 332-336
四方を海で囲まれた我が国は,船舶無しでは成り立たない.もし船舶の事故が発生した場合,その影響は甚大であり,船舶の安全確保は最重要課題の一つである.船舶は「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」等の規則を遵守することにより,最低限の安全が確保されると考えられる.SOLAS条約等の船舶の国際的な規則は,国際連合の下部組織である国際海事機関(International Maritime Organization, IMO)において作成されている.IMOにおいて安全性と経済性のバランスを考慮した合理的な規則を策定するためにFormal Safety Assessment(FSA)が開発され,その手順等を纏めたFSAガイドラインが発効されている.また,SOLAS条約には代替設計・同等設計に関する規定があり,規則で求められる安全と同等の安全を有する場合,規則からの逸脱が認められている.この同等安全を主張する方法の一つとしてリスク評価があり,そのためのガイドラインの策定や研究が実施されている.更に最近のIMOの規則では,規則の中でリスク評価の実施を求める例が増えてきている.本稿では,国際規則の観点からの船舶の安全確保の取組み事例として,FSAを中心に紹介するとともに,代替設計・同等設計及び規則でのリスク評価実施要求についても紹介する.