日本信頼性学会誌 信頼性
Online ISSN : 2424-2543
Print ISSN : 0919-2697
ISSN-L : 0919-2697
43 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
展望 「安全性・信頼性の技術マネジメント」
  • 平尾 裕司
    2021 年43 巻6 号 p. 326-331
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー

    EUでは,法令としての指令と規則のもとで列車運行事業者の組織と運営に対する安全証明およびインフラ設備管理者の設備認可,さらに技術や運用の変更に対するリスクアセスメントについて定めている.また,国境を越えて多国を走行する列車の制御システムへの技術的対応としてシステム仕様,適用すべき安全規格と適合アセスメントについて定めている.本稿では,このようなEUにおける鉄道政策とそれを実現する安全マネジメント,国境を越えての列車乗り入れについて述べる.また,鉄道信号システムにおける日本の取組みについてEUの方策と比較して述べる.

  • 柚井 智洋
    2021 年43 巻6 号 p. 332-336
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー

    四方を海で囲まれた我が国は,船舶無しでは成り立たない.もし船舶の事故が発生した場合,その影響は甚大であり,船舶の安全確保は最重要課題の一つである.船舶は「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」等の規則を遵守することにより,最低限の安全が確保されると考えられる.SOLAS条約等の船舶の国際的な規則は,国際連合の下部組織である国際海事機関(International Maritime Organization, IMO)において作成されている.IMOにおいて安全性と経済性のバランスを考慮した合理的な規則を策定するためにFormal Safety Assessment(FSA)が開発され,その手順等を纏めたFSAガイドラインが発効されている.また,SOLAS条約には代替設計・同等設計に関する規定があり,規則で求められる安全と同等の安全を有する場合,規則からの逸脱が認められている.この同等安全を主張する方法の一つとしてリスク評価があり,そのためのガイドラインの策定や研究が実施されている.更に最近のIMOの規則では,規則の中でリスク評価の実施を求める例が増えてきている.本稿では,国際規則の観点からの船舶の安全確保の取組み事例として,FSAを中心に紹介するとともに,代替設計・同等設計及び規則でのリスク評価実施要求についても紹介する.

  • 野本 秀樹
    2021 年43 巻6 号 p. 337-340
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー

    宇宙開発における高信頼性達成は,一旦打ち上がってしまえば交換・修理が極めて困難となる宇宙機においては最重要課題である.具体的な信頼度の値は,宇宙機の開発要素のうち,ハードウエアについては伝統的な部品故障率に基づく計算方法により求められ,その値の積み上げによりシステム全体の故障確率を要求値以下にするよう管理されている.一方,ソフトウエアについては,従来から「ソフトウエアの故障確率」を定量化することが困難であるため,一律「故障確率ゼロ」が想定されてきた.

    しかしながら,宇宙機のミッション喪失事例1)2)3)を見ると,ハードウエア故障に起因したものはむしろ少数であり,ソフトウエアの設計不良によるものが支配的となっている.したがって,宇宙機の信頼性解析においては,ハードウエアのみならず,ソフトウエアの信頼度計算手法の確立が求められる.

    本論では,米国航空宇宙局(NASA)において進められたConstellation計画4)で採用された手法5)を紹介し,その特徴,意義を述べる.この手法は,ソフトウエアの機能モデル(データフローモデル)をもとに機械学習を行い,テストデータの観測値から推定した事後確率が,求められるソフトウエア・コンポーネントの信頼度を満たすことを立証する手法となっている.

  • 酒井 清一郎, 横田 孝弘, 三宅 優, 窪田 歩
    2021 年43 巻6 号 p. 341-347
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー

    携帯電話は,その普及に伴ってライフラインとしての役割を担うようになっており,5Gにおいては各方面で進むDXを支えるIT基盤になりつつある.更に将来には,昨今のコロナ禍で拡大したネット上のサイバー空間と現実世界があるフィジカル空間を結んで新たな価値を創造するSociety5.0を支える社会基盤として期待されている.

    社会を支えるモバイルネットワークには信頼性が強く求められるため,4G迄は主にトラヒック集中や災害,設備の不具合等に起因するシステム障害を念頭に,設備の冗長構成・運用監視体制・非常時の対処等を積み重ねて,安定したサービスを提供するために信頼性を重視した設計・構築を行ってきた.加えて5G以降では,ネットワーク設備の仮想化,スライス,エッジコンピューティング等のネットワーク機能やアーキテクチャの高度化が進展する方向であり,これに対応したセキュリティの確保が重要となる.

    本稿では,4G迄の対策に加えて,5G時代における信頼性(セキュリティ)に関する国内外での検討の状況,そして基本参照モデルやセキュリティ上の考慮事項と技術的対策について解説する.

  • 齊藤 智明
    2021 年43 巻6 号 p. 348-356
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー

    自動車は,生活に欠かせない存在であると同時に,環境保全,交通事故防止等の社会的な要求にもタイムリーに応えてきた.近年,さらなる利便性,環境性と安全性を向上させるため,電子制御の役割がますます大きくなっている.本稿では,まず自動車の電子制御の役割とその変化を概説し,自動車の電子制御システムの信頼性,安全性向上への取り組みの変遷を紹介する.最後に,現在注目されているシステム思考を用いたシステム開発について紹介する.

編集後記
論文
  • 五味 悠一郎, 堀井 絢友
    2021 年43 巻6 号 p. 365-370
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー

    サイバーセキュリティ戦略では,セキュリティの人材育成・確保を横断的施策の一つと位置付けており,人材育成が急務である.人材育成には,初学者に適した教材の開発が必要であると考えた.現在のデジタルフォレンジックの教材は初学者向きではないため,短期間で初学者がデジタルフォレンジックを習得できる教材を開発した.2018年度と2019年度に開発した教材を使用した授業を実施し,アンケート調査および教材に含まれる演習部分の正答率によって教材を評価した.初学者の学習意欲を引き出すことはできたが,正答率は2018年度に比べて2019年度の方が低かった.正答率が上昇するように,教材を見直す必要がある.

feedback
Top