保育学研究
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原著<論文>
「みんなの中の私」という意識はいかに育つか
―自閉症のある中学生の自己意識の変容の事例から―
山崎 徳子
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2010 年 48 巻 1 号 p. 23-35

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抄録
この研究の目的は,障害児学童保育Pで,自閉症のある中学生まさきが,「友だち」と呼んで同世代の子どもとかかわろうとするまでを,「私は私」と「みんなの中の私」という自己意識の観点から考察することと,彼の周囲の人々のかかわりの意味を問うことである。Pで包まれるような状態であったまさきの自己性は早期に発揮され,「私は私」という自己意識は充実したが,他者を受け止めることはできず,自己防衛的になっていた。「棒人間」を使って人とやりとりすることは,自己内の対話的関係を生み出し,さらに他者との対話的関係が豊かになり,相互に主体として受け止めることの繰り返しがなされた。まさきは自分がなりたい「良き自己」を感じ,人格を形成することの喜びや誇りを得,人にかかわろうとする志向性が生まれた。「みんなの中の私」という自己意識の元になったまさきの「内的な他者」に生命を吹き込んだのは,「障害への対応」ではなく,周囲の人々の受動的なかかわりと,まさきの成長を喜びあう心情であった。
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© 2010 一般社団法人 日本保育学会
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