保育学研究
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原著<論文>
「気になる子」の保育研究の歴史的変遷と今日的課題
野村 朋
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2018 年 56 巻 3 号 p. 70-80

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抄録

本稿は,「気になる子」の保育の研究の歴史的変遷と最近の研究動向を概括し,今日的な課題を探求することで,「気になる子」の保育研究と実践の発展に寄与することを目的とする。戦後の保育研究では,障害児も含め「問題児」としていたが,障害児保育の制度化とともに,障害のない子どもが「気になる子」として注目され,子ども・保育者の両面の要因から検討する研究がみられるようになった。その後,障害児保育,障害児・者教育の施策の動向と呼応し「気になる子」と発達障害との関連の研究が増大してくる。他方で保育実践の中からは「気になる子」を含めた集団保育の豊かな可能性とその保育を行う上での困難が示されている。「気になる子」の保育研究の今日的課題は,保育実践研究を丁寧に蓄積し,集団保育の中で個と集団を統一的にとらえる視点から保育内容を分析し,研究課題を明らかにすることである。このような視点から,本稿では,「気になる子」を含むすべての子どもたちが育ちあう保育実践の研究課題について,特別ニーズとインクルーシブ保育の視点および集団づくりと個の育ちの統一の視点から研究することが必要であることを指摘した。

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© 2018 一般社団法人 日本保育学会
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