2021 年 59 巻 1 号 p. 21-32
本研究の目的は,臨時教育審議会で生じた「教育」から「学習」への政策転換をめぐる議論に焦点を当て,その中で幼児教育がいかに位置づけられ,いかに方向づけられたのかを明らかにすることである。関係資料の分析の結果,臨時教育審議会では学習者である国民の自発性を育成することが重視され,幼児期から学習意欲や自己教育力を培う必要性が議論されていた。そして,幼稚園教育の内容も,その方針に沿う形で見直されていた。すなわち,幼児教育は臨時教育審議会の議論によって「生涯学習体系」の一部を担うものとされ,学習社会を生きていくために必要な自発性を培っていくことが求められていた。