本研究の目的は,「経験年数による熟達化」と「経験の意味づけによる熟達化」の二側面から,障害のある子どもの保育経験がある初任と中堅前期の保育者とを比較することにより,障害児保育の実践知がどのように拡がっていくのかを明らかにすることである。実践知を読み解く方法としてSCATを用いた。
その結果,経験年数に伴い,保育者は多様な視点から障害のある子どもへの理解を深めていくとともに,環境の幼児適応や居場所感といった経験の意味づけも生じていることを見出した。そして,経験による子ども理解の拡がりと意味づけによる保育者のあり方の問い直しの両面をバランスよく意識することによって,障害児保育の実践知が拡がっていくことを明らかにした。