2022 年 60 巻 1 号 p. 7-19
本研究の目的は,静岡大学教育学部附属幼稚園が昭和25年と昭和32年に作成した二つの教育課程を比較検討することにより,「保育要領」から「幼稚園教育要領」への改訂が保育者達に与えた影響を明らかにすることである。その結果,それぞれの教育課程作成に於いては「要領の基本精神の理解」と「要領に沿った教育課程の作成」が,矛盾を孕みながら進められていたことが明らかになった。保育者達は,時代に合わせて教育課程を作成しながらも,自らの実践を基にした修正を加えていた。それは,他の学校種の教育課程形式には収まり切れない保育の独自性を表そうとする,保育者の主体的な姿勢から生まれたものであった。