2023 年 61 巻 1 号 p. 127-138
本研究の目的は,就学前施設において日本語を母語としない子どもが,母語を使用しながらクラスの一員としてその子らしさを発揮していく過程を明らかにすることである。日本語が全く分からない状態で入園した子どもの1年8か月を園で使う言語に焦点を当て参与観察を行い,発生の三層モデルを用いて複線径路・等至性モデリングで分析した。その結果,通じないから母語を使う必要がないのではなく,母語を使う自分が周囲に受け入れられることで丸ごと自分を受け入れてもらえたという実感を得ることが不可欠であり,母語を肯定的に感じられるクラスは主体的な行動を促すことが示唆された。