抄録
本稿では,「子ども理解」に関連する先行研究の関心の中心を分析し,「子ども理解」が抱える課題の整理を通して,保育・幼児教育において「子ども理解」が形骸化されず,実質的で固有な言葉としてあり続けるための提案を試みる。各先行研究の「子ども理解」の扱い方を分析した結果,8つの【解釈】と3つの傾向に分類された。「子ども理解」が普遍化したのは,保育者の行為を代弁する言葉として「子ども理解」という言葉が用いられたことに起因していた。「子ども理解」への関心の高まりと研究の蓄積が,「子ども理解」の自明な使用を促し,保育・幼児教育の一つの通念としての側面を強めた経緯を示し,課題と展望を論じた。