2013 年 15 巻 1 号 p. 17-30
「非感染性疾患予防:身体活動への有効な投資」は,「身体活動のトロント憲章:世界規模での行動の呼びかけ(2010年5月)」を補完する資料として,2011年2月に公刊された。本資料も,国際身体活動健康学会の協議会の1つである身体活動の世界規模での支援活動協議会および有識者により提案されたものである。第4回国際身体活動公衆衛生会議(2012年10-11月,シドニー)終了後,本会議への出席者を中心に日本語版への翻訳を行った。本稿では,資料作成の関連情報や背景,翻訳の手続き,資料の内容について紹介した。 この新しい資料では,有効性が確認されたエビデンスや世界中で応用することが可能な身体活動推進のための7つの投資が提案された:1)「学校ぐるみ」のプログラム,2)歩行,自転車,公共交通の利用を優先する交通政策・システム,3)余暇身体活動,レクリエーションおよび移動に伴う歩行・自転車利用を,生涯にわたって公平かつ安全に行えるような機会を提供するための都市計画に関する規制およびインフラ,4)プライマリ・ヘルスケアシステムへの身体活動および非感染性疾患予防の統合,5)身体活動に関する意識を高め,社会規範を変えるためのマスメディア活用を含む一般社会に向けた教育,6)多数の場面や機関を巻き込み,地域の積極的な関与と資源の動員・統合による地域社会全体でのプログラム,7)「スポーツ・フォー・オール」を奨励し,生涯にわたる参加を促すスポーツシステムとスポーツプログラム。非感染性疾患の負担を減らし,生活の質(QOL)や生活環境を改善するために,十分な資源の下,多くの国において国民全体に対して身体活動促進のための7つの投資を実行すべきであることが強調されている。日本語版および原(英語)版を付表として添付したので,「トロント憲章」と同様にこの新しい資料が広く活用されることを期待する。