運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
原著
地域在住高齢者における腰痛,運動習慣と抑うつ症状の関連
江尻 愛美 柴田 愛石井 香織仲 貴子岡 浩一朗
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2016 年 18 巻 2 号 p. 67-75

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抄録

目的:地域在住高齢者における腰痛の強度別の有訴率,腰痛の強度と抑うつ症状の関連,運動習慣が腰痛と抑うつ症状の関連に与える影響を横断的に明らかにすること。

方法:千葉県松戸市の住民基本台帳より無作為抽出した65歳から84歳の高齢者3,000名に対して郵送法による質問紙調査を実施し,1,051名より有効回答を得た。調査内容は,腰痛の強度,抑うつ症状,運動習慣,人口学的・社会経済的属性,生活習慣,現病歴だった。腰痛の強度と抑うつ症状の関連および腰痛と運動習慣の抑うつ症状への複合的な関連を検討するため,多重ロジスティック回帰分析を行った。

結果:腰痛の有訴率は47.7%(軽度:35.2%,中程度:10.0%,強度:2.5%)だった。腰痛がない者を参照群とすると,軽度の腰痛を有する者(オッズ比(OR)=1.8595%信頼区間(95CI): 1.23-2.79),中程度以上の腰痛を有する者(OR=2.0395CI: 1.15-3.58)は,抑うつ症状の増加と有意に関連していた。腰痛の強度と運動習慣の複合的な関連を検討した結果,腰痛なし・運動習慣あり群を参照群とすると,軽度の腰痛あり・運動習慣なし群(OR=2.8595CI: 1.63-4.98),中程度以上の腰痛あり・運動習慣なし群(OR=2.9295CI: 1.42-6.00)は,抑うつ症状を有することと有意に関連していた。

結論:地域在住高齢者の約半数は腰痛を抱えており,その4分の1は中程度以上の腰痛を有していた。また,腰痛の強度と抑うつ症状に有意な正の関連が認められた。更に,運動習慣がない群は,ある群よりも,腰痛の強度と抑うつ症状との関連が強くなる傾向があった。

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© 2016 日本運動疫学会
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