目的:いくつかの研究では,効果や阻害要因の認知と身体活動との関連性が検討されているものの,高齢者に対する筋力トレーニングの推奨に合わせてこれらの関連性に焦点を当てた研究は行われていない。本研究では,日本人高齢者を対象に,筋力トレーニングの健康効果の認知,筋力トレーニングの阻害要因の認知と,筋力トレーニング行動の変容ステージとの関連性を検証した。
方法:所沢市から無作為抽出された1244名(60~74歳)に横断調査を行った。変容ステージを独立変数,健康効果の認知(例:痛みが和らぐ)と阻害要因の認知(例:施設が必要な運動)を従属変数とした。データは,共分散分析と,Bonferroni法による多重比較によって解析された。
結果:人口統計学的要因を調整したうえで,前熟考期の者の健康効果の認知得点は,他の4つのステージの者よりも有意に低かった。前熟考期・熟考期の者の阻害要因の認知得点は,準備期・維持期の者の得点よりも有意に高かった。
結論:これらの結果は,高齢者の健康効果に関する情報や,推奨されている筋力トレーニングの種類に関する情報は,高齢者に対する筋力トレーニングの促進戦略を開発するうえで有益である可能性を示している。