2020 年 22 巻 2 号 p. 83-91
目的:本研究では,就労に意欲関心をもつ60歳以上の日本人を対象に膝伸展力と非就労との関連を横断的に検討することを目的とした。
方法:対象者は290名(平均年齢71.3±5.5歳,年齢の範囲は60~86歳,男性76名,女性214名)であった。膝伸展力は,片脚用筋力測定台を用いて等尺性の筋力を測定した。過去1年間の有償による就労の実施状況を質問紙によって尋ね,非就労の定義を過去1年間で1度も仕事をしていないこととした。 また,その非就労の理由に体力的な不安が該当するか否かも尋ねた。ロジスティック回帰分析によって,性,年齢,BMIを調整した膝伸展力と非就労との関連を検討した。
結果:対象者の内,166名が非就労であり,その内39名が体力的な不安によって就労を実施していない者であった。理由を問わない非就労に対する膝伸展力の第1三分位群を基準とした第2三分位群,および第3三分位群のオッズ比は,0.67(0.37-1.22),および0.69(0.37-1.27)であった。体力的な不安による就労の非実施については,第1三分位群を基準とした第2三分位群,および第3三分位群のオッズ比は,0.54(0.23-1.28),および0.33(0.12-0.89)であった。
結論:本研究では,膝伸展力の高い者は低い者と比較して非就労が少ない可能性が示唆された。本研究は横断研究であるため,今後は縦断研究によって検証する必要がある。