2017 年 10 巻 2 号 p. 18-31
本稿では,自然資本と人工資本の代替不可能性を論点として提起されたクリティカル自然資本(Critical Natural Capital;以下CNC)概念をめぐるこれまでの議論と現状を概観し,CNC概念の到達点と課題を明らかにする.とりわけ,P. エキンズによって構築されたCNCを特定するための枠組みに注目し,CNC概念を深める上で検討すべき課題を提示する.本稿の分析によって,Ekins et al. (2003)の枠組みでは代替可能性や損失の不可逆性,損失の甚大性という概念の規定の仕方によってその解釈には大きな幅が生じることが明らかとなった.今後,技術革新の可能性や割引因子とも関連づけながら,特定条件を精緻化していくことが求められる.