2017 年 10 巻 2 号 p. 4-17
本稿では,ストックによる持続可能性評価という統一的枠組みにより,植田和弘教授の業績の一部を振り返りながら,関連する分野を概観する.1980年前後に提唱された社会金属学は,金属ストックの利用と廃棄が乖離していることに着目し,利用と廃棄の統合を目指した.このコンセプトはその後,産業エコロジー,廃棄物とリサイクルの経済学,持続可能な発展の理論という,今日の環境経済学に欠かせない3つの分野の発展の伏線となったと位置付けられる.また,社会金属学と経済学との統合に向けて,マテリアルフローとマテリアルバランスという2点で折り合いをつける試みが行われた.さらに近年,持続可能な発展の指標として使われている,様々な資本ストックの価値を集計した包括的富について,課題を展望する.