社会の福祉を決める要因として,人工資本・人的資本・自然資本を重みづけして集計した新国富(IW: Inclusive Wealth; 包括的富)指数が,持続可能性の指標の1つとして注目されている.これまで,厚生経済理論に基づいた理論分析と国レベルでの計測が主に進められてきたが,今後は国や地域レベルでの持続可能な発展に向けた政策決定プロセスへの活用も期待される.本稿では,理論と計測に関する最新の研究を簡単に紹介した上で,そうした政策決定プロセスへの国・地域における活用の試みとして,災害からの復興の評価,自治体における政策意思決定,インフラの整備や維持管理等に関する費用便益分析と政策評価を紹介する.今後は,地域の社会関係資本が福祉に影響する経路の解明や,富指標を用いた事前の政策評価の積み重ねが期待される.