気候変動対策の遅れなど,政治的短期志向の弊害が顕在化するとともに将来世代の利益や権利を考慮することへの関心が高まっている.このような背景から,本稿では政治的短期志向が生じる4つの要因とそれに対処すべき2つの論拠を整理した.さらに,幅広い分野にわたる将来世代の考慮に資する国内外の実在の制度をレビューし,11の制度類型としてそれらを概観した.将来世代考慮の制度の機能には,大別すると意思決定内容に係る監視的機能と意思決定主体の長期志向を促す醸成的機能があると考えられた.それぞれの制度類型における課題とともに,将来世代考慮の制度に残された課題を提示し,今後の研究展望を示した.