2009 年 2 巻 1 号 p. 64-82
温暖化対策としてのエネルギー節約新技術の開発を含めた環境技術革新の誘発に関する経済学的な研究は,理論的研究の枠組みにおいて検討されることが多いものの,実証的な研究はまだ数少ない.本研究では,誘発的技術革新仮説を理論的基礎としたPopp (2002) の実証研究の枠組みに基づき,日本における1974-2005年のエネルギー節約のための新技術に関する特許出願件数に対する原油価格の変化の影響を分析した.分析にあたり,技術を省エネルギーおよび新エネルギーに分類し,誘発技術革新における要素代替と要素節約のそれぞれの効果を分析した.
実証分析の結果から,省エネルギー技術では誘発技術革新効果が見られたのに対し,新エネルギー技術では原油価格以外の変数について正かつ有意な影響があり,省エネルギー技術の開発に比べるとより過去に出願された特許の蓄積やR&D支出に依存したことを意味している.本研究における分析結果から得られた含意としては,原油価格の上昇はエネルギー節約のための技術革新を促進しうるものの,より代替的な技術の開発にはその分野での研究開発を進めるための政策が必要である.