面源汚染負荷削減に対して環境被害課税導入の可能性が検討されてきた.本研究では環境被害課税下において経済主体が互いにモニタリングと制裁を行うピア・プレッシャー環境が生じると想定した上で最適課税と経済主体の協力行動について分析を行い,それぞれについて先行研究とは異なる結果を得た.先行研究で最適課税は経済主体それぞれに水域の環境被害全額を補償させることとされていたが(100%ルール),ピア・プレッシャー環境が存在するとき100%未満の補償を求めることが最適となった.また,最終的に協力するインセンティヴを持つことには変わりないが,協力前の経済主体が置かれる状況によって協力後の削減努力水準が変化することが分かった.政策を決定する上で協力後だけでなく協力前の経済主体の状態に対しても注意を払うことが重要となる.